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1. Introduction

VESTAは結晶構造、電子・核密度等の三次元データ、及び結晶外形の可視化プログラムです。 次のような特筆すべき機能を備えています。

  • 複数の結晶構造モデル、電子・核密度や波動関数等の三次元データ、結晶外形を同時に扱うことが可能。
  • タブを使用してリソースを消費することなく複数のファイルを同時にオープン可能。
  • 同一プロセスでタブを含んだWindowを複数開くことが可能。
  • 高速でスマートな結合探索アルゴリズム。
  • 原子、結合、配位多面体、isosurface上のポリゴン数などの総数が事実上無制限 (32bit system での理論的限界は各1,073,741,823)。
  • RIETAN-FP, ORFFEとの連携により、Rietveld法に於いて制約条件を課す結合距離や結合角を可視化・確認する機能。
  • 非標準的な軸設定の空間群における等価位置の変換、超格子の作成やprimitive- complex-lattice間の変換をサポート。
  • 半透明のisosurfaceと構造モデルを重ね合わせた表示。
  • Isosurfaceの表面を静電ポテンシャルなど、異なる物理量で彩色する機能。
  • 複数のvolumetric dataの差分表示や加算表示。
  • ビデオカードの制限を超える高解像度画像の出力。

VESTAは、電子・核密度の解析・可視化のためのソフトウェアパッケージであるVENUS software packageの一部です。 VESTAはVENUS package中で、結晶構造と電子・核密度の可視化をそれぞれ担っていたVICS、VENDの2つのプログラムを起源とし、wxWidgetsを採用した全く新しいユーザーインターフェースの下にそれらを統合すると共に、大幅に機能拡張したものです。

VESTAはWindows, Mac OS X, Linuxの3大プラットフォームで動作し、非商用の用途には無料で配布されています。

2. VESTA 3の新機能
  • 結晶外形の描画
  • 複数の結晶構造、電子・各密度データ、結晶外形データなどを同一画面上で統一的に可視化
  • 複数レベルの等値曲面の重ね合わせ
  • 錯体やゼオライトなどの複雑な構造をよりスマートに表示できるよう結合探索アルゴリズムを拡張
  • 結晶構造モデルから原子散乱因子を計算し,電子・ 核密度を計算・表示
  • パターソン関数の計算・表示
  • 原子位置の周りの電子数や核密度の和をボロノイ分割により計算
  • 等値曲面の描画と二次元スライスの計算を大幅に高速化
  • 異方性原子変位パラメーターの主軸方向のベクトルと平均二乗変位を出力
  • 選択した原子に対する最適平面の決定
  • 原子のラベル表示
  • サイトや結合の種類ごとにスタイルを個別指定可能
  • 手作業での対称要素の編集
  • 対応ファイル形式の追加(GSASのEXP形式など)と互換性の強化
  • GUI操作におけるundoとredoのサポート
3. 対応ファイル形式
Input

Structure data

  1. VESTA format (*.vesta)
  2. VICS format (*.vcs)
  3. American Mineralogist Crystal Structure Database (*.amc)
  4. asse (*.asse)
  5. Chem3D
  6. CIF (Crystallographic Information File)
  7. CrystalMaker text file (*.cmt)
  8. CSSR (Crystal Structure Search and Retrieval)
  9. CSD/FDAT
  10. DL_POLY CONFIG
  11. FEFF input file (feff.inp)
  12. FHI-AIMS input file (*.in)
  13. GEOMETRY.OUT output by the Elk FP-LAPW Code
  14. GSAS format (*.EXP)
  15. ICSD (Inorganic Crystal Structure Database)
  16. ICSD-CRYSTIN
  17. MDL Molfile
  18. MINCRYST (Crystallographic Database for Minerals)
  19. MOLDA
  20. PDB (Protein Data Bank)
  21. Input file of RIETAN-FP (*.ins)
  22. Output file of RIETAN-FP (*.lst)
  23. Input file of SHELXL (*.ins, *.res)
  24. Output files of STRUCTURE TIDY (*.sto)
  25. Structure data files output by USPEX.
  26. WIEN2k (*.struct)
  27. XMol XYZ (*.xyz)
  28. F01 for SCAT and C04D for contrd
  29. MXDORTO/MXDTRICL FILE06.DAT, FILE07.DAT
  30. XTL file (*.xtl)

Volumetric data

  1. PRIMA binary format (*.pri; *.prim)
  2. MEED/PRIMA text data (*.den)
  3. Energy Band (*.eb)
  4. General volumetric-data (text format) (*.?ed)
  5. Periodic volumetric-data (text format) (*.grd)
  6. General volumetric-data (binary format) (*.ggrid)
  7. Periodic volumetric-data (binary format) (*.pgrid)
  8. Compressed volumetric-data format (*.m3d)
  9. SCAT volumetric-data files (*.sca, *.scat)
  10. WIEN2k (*.rho) obtained with wien2venus.py
  11. WinGX 3D Fourier (*.fou)
  12. X-PLOR/CNX (*.xplor)

Structure & volumetric data

  1. CASTEP (*.cell, *.charg_frm)
  2. GAMESS input and 3D surface data files output by MacMolPlt
  3. Gaussian Cube format
  4. VASP
  5. XCrySDen XSF format
Output

Structure data

  1. Original format of VESTA (*.vesta)
  2. CIF (Crystallographic Information File)
  3. PDB (Protein Data Bank)
  4. SHELXL (*.ins)
  5. Standard input file of RIETAN-FP (*.ins)
  6. XMol XYZ
  7. Chem3D (*.cc1)
  8. STL file (*.stl)
  9. VRML (*.wrl)
  10. DL_POLY CONFIG
  11. Input files of MADEL (*.pme)
  12. Input files of STRUCTURE TIDY (*.stin)
  13. P1 structure (*.p1)
  14. VASP POSCAR format
  15. Fractional coordinates (*.xtl)

Volumetric data

  1. PRIMA binary format (*.pri)
  2. General volumetric-data (text format) (*.?ed)
  3. Periodic volumetric-data (text format) (*.grd)
  4. General volumetric-data (binary format) (*.ggrid)
  5. Periodic volumetric-data (binary format) (*.pgrid)
  6. Compressed volumetric-data format (*.m3d)

Graphic formats (raster image)

  1. BMP
  2. EPS
  3. JPEG
  4. JPEG 2000
  5. PNG
  6. PPM
  7. RAW
  8. RGB (SGI)
  9. TGA
  10. TIFF

Graphic formats (vector image)

  1. EPS
  2. PDF
  3. PS
  4. SVG
4. VESTA開発の背景
VESTAは結晶構造の可視化ソフトウェア・VICS、および、電子・核密度の可視化ソフトウェア・VENDを起源としています。VICSとVENDはRuben A. Dilanian博士と泉富士夫博士により、VENUS systemの一部として2001年に開発が開始されました。VENUS systemは2002年暮れに一般公開され、以来、多くの研究に用いられています。しかしながら、VICSとVENDにはパフォーマンス上の大きな問題があり、また、基盤としていたGUIツールキット、GLUTとGLUIの制約から操作性も不十分でした。また、等値曲面と構造モデルを重ねるには、VICSで構造を作成してからテキストファイルに保存し、それをVENDでインポートする必要があるなど、VICSとVENDの使い分けも面倒でした。C言語で書かれたソースコードは拡張性にも乏しく、限られた機能、限られた数のオブジェクトしか扱えませんでした。

2004年6月末には開発者の一人であるDilanian博士がプロジェクトを去ることが決定し、VICSとVENDの開発ストップの気配が濃厚になりました。そこで、既存コードをベースに、VICSやVENDに取って代わる、新しいプログラムの作成を開始しました。GUIはwxWidgetsというツールキットを使用して新たに構築し、C言語で書かれたソースコードを必要に応じてC++で書き直して移植、大幅な拡張を行いました。まずはVICSの書き換えから初め、約一年後の2005年7月にVICSの後継としてVICS-IIを公開しました。その後、VICS-IIのフレームワークをそのまま利用し、更にVEND相当の機能を追加して統合可視化システム、VESTAへと発展させました。VICS-IIの全機能はVESTAにそのまま引き継がれています。

VENUSに関する情報の詳細は泉富士夫先生のホームページを参照して下さい。

5. Change Log
  • 2022年8月11日 ver. 3.5.8
    • 削除した原子や結合などの非表示オブジェクトが、v3.5.6以降ではファイルの再読込時に再現されない問題を修正。
    • 一部のデータでは結晶構造因子の値が計算のたびに異なる結果を返すことがあるバグを修正。原因はマルチスレッドの制御のバグで、マルチコアCPUでのみ再現。
    • Windows版で*.vestaを再読込すると、2D Data Displayの内容が表示されないバグを修正。
    • v3.5.4以降では、巨大な標準偏差をもつサイトが近くのサイトと同一視され、表示されないバグを修正。
    • CIFファイル中のB_ijがbeta_ijと解釈される問題を修正。
    • 配位多面体を選択時に、結合距離が短い順に結合情報を表示するように修正。
    • SHELXフォーマット、およびフーリエ合成用の*.fcfフォーマットのサポートを改善。
  • 2021年1月9日 ver. 3.5.7
    • 二面角を計算すると構造モデルの表示が乱れる問題を修正。
    • 格子面のd値をオングストローム単位で行えない(反映されない)問題を再修正。
    • wxWidgetsを最新版に更新。
  • 2020年12月20日 ver. 3.5.6
    • 一部のPDB, XSF, VASPファイル読み込みでクラッシュする問題を修正。
    • 電子密度分布から計算した静電ポテンシャルエネルギー密度 v(r) の符号が反転していた問題を修正。
    • Linux版において単位胞を変換する際、変換行列の行列式が0の場合に警告が表示されずにクラッシュする問題を修正。
    • Uiso/Bisoの値がファイル中に記録されていない場合のデフォルト値を0に、デフォルトのタイプをUisoに変更。
    • Uiso/Bisoの値が0の場合、CIFファイルには値ではなく'?'を出力するよう変更。
    • XSFファイル中の2番目以降のvolumetric dataを読めるようにした。
    • Linux版 ver. 3.4.8以降で静電ポテンシャルとマーデルングエネルギーの計算ができない問題を修正(パッケージから欠落していたMADELプログラムを再収録。)
  • 2020年9月26日 ver. 3.5.5
    • v3.5.3および3.5.4において格子面のd値がダイアログ中で正しく表示されないバグを修正。
  • 2020年9月24日 ver. 3.5.4
    • 循環色による彩色機能をサポート
    • STLデータに配位多面体、結晶外形、等値曲面をエクスポート可能にした。
    • v3.5.3において原子位置の重なり判定が厳しく、多重度が本来より多く表示されることがあるバグを修正
  • 2020年8月23日 ver. 3.5.3
    • v3.4.8以降のWindows版で結合距離の計算がおかしい問題を修正。これらコンパイラー固有のバグに対処するため、モノリシックなビルド設定に戻した。
    • v3.5.1以降において、反射リストのソートに伴って構造因子の振幅と位相とが対応しなくなることがあり、モデル電子密度・核密度の計算結果が乱れることがある問題を修正。
  • 2020年5月6日 ver. 3.5.2
    • v3.5.0および3.5.1において、CIFエクスポートの際、"_cell_angle_alpha"などのキーワードが"_cell_length_alpha"などと出力されるバグを修正。
    • v3.5.1において、非周期的な構造データを表示した際にクラッシュすることがある問題を修正。
  • 2020年5月4日 ver. 3.5.1
    • Windows版のver.3.4.8および3.5.0において、結晶外形の描画が乱れることがあるバグを(今度こそ)修正。
    • 等価反射の中で、"Structure Factors"や"Powder Diffraction Pattern"ダイアログに表示される反射指数を調整。
    • *.vesta形式に保存する際、VESTA内で生成したvolumetric dataがある場合は、それを*.pgrid形式に自動保存して*.vesta内にリンクを記録するようにした。
    • 構造データに加えてvolumetric dataもVASP形式にエクスポート可能にした。
    • CUBE形式への構造データとvolumetric dataのエクスポートを新たにサポート。
  • 2020年4月29日 ver. 3.5.0
    • VASP形式の読み込みに関するver.3.4.8のバグを修正。
    • VASP形式でエクスポートする際、規約格子への変換に失敗したり、原点がずれてしまう問題を修正。
    • VASP形式で出力する際、P格子に変換するオプションを追加。
    • VRML形式でエクスポートする際、原子の半径が画面表示と異なったり、結晶外形が出力されないバグを修正。
    • Windows版のver.3.4.8において、結晶外形の描画が乱れることがあるバグを修正。
    • Waylandセッション上でGTK3版のVESTAが起動しない問題を修正(起動時に自動的に環境変数GDK_BACKEND=x11を設定)。
    • 3D画面中のボリュームデータ断面に等高線を描く機能を追加。
    • ボリュームデータ断面のcutoff level(描画しない領域)を、より柔軟に設定可能にした。
    • 複数の結晶データを単一のCIFファイルへエクスポートできるようにした。
    • 画像ファイルをエクスポートする際、PNGとTIFF形式では背景色を透明に設定可能にした。
    • ダイアログ中のリスト項目(原子、結合、格子面等)の順序を、前後に移動するボタンを追加。
    • 原子を選択した際、分率座標や対称操作の情報に加え、正規直交座標系での座標情報を追加。
  • 2019年12月30日 ver. 3.4.8
    • Structure factorsダイアログボックスにおいて、中性子回折の場合にも、強度(I)にX線の場合の偏光因子が掛かっていた問題を修正。
    • 同一平面上に4原子以上が乗る配位多面体が正しく描画されない問題(v3.4.1で修正)が一部残っており、微調整。
    • VESTA形式でデータを保存した際、2階層より上位ディレクトリーにある外部ファイル参照が正しく保存されないバグを修正。
    • ファイルダイアログからPOSCAR/CONTCARを選択できない問題を修正。
    • ファイル名に関わらず複数のデータセットを含むVESP形式ファイルからの全データセットの読み込みに対応。(従来はファイル名がPOSCARSの場合に限り、2相目以降のデータを読んでいた。)
    • pdbファイル形式のサポートを改善。
    • WindowsおよびLinux GTK3版においてHiDPI対応(Per Monitor DPIには未対応)。
    • ダークモード対応を改善。
    • wxWidgetsライブラリーの更新、ビルドオプションの変更、および他の内部的変更。
  • 2019年6月15日 ver. 3.4.7
    • macOS 10.14.4以降で画面が表示されなかったり乱れる問題を修正。
    • 構造モデルや表示範囲等を編集後も、サイドパネルで設定したラベルや選択状態を保持するように改善。
  • 2019年1月27日 ver. 3.4.6
    • CIFファイルの読み込み時に複数行コメントが正しく認識されないバグを修正。
    • 占有率が1未満のサイトを含む構造でマーデルングエネルギーとサイトポテンシャルの計算が正しく行われない問題を修正。
    • magOS 10.14 Mojave上でのGUIに関する幾つかの問題点を修正。
    • 32 bit Linux版を廃止。
    • Linux版において、libpng12.so.0への依存を解消。
  • 2018年11月22日 ver. 3.4.5
    • 空間群の設定番号を変更した際、結晶構造を維持するよう構造パラメーターを自動更新する機能が、P b a n (No. 50)の場合に正しく機能しない問題を修正。
    • 単位格子の変換行列が指定されている場合にも、空間群の設定番号変更に伴う構造パラメーターの自動更新が機能するよう、修正。
    • 対称要素に"e"を含む直方晶系の空間群表記に対応(新: A e m 2, 旧: A b m 2など)。古い表記のファイルも引き続き読み込み可能。
    • 最近のUbuntu Linux上でクラッシュする問題を修正。
    • macOS 10.14 Mojaveに対応。最低動作要件をOS X 10.9以上に引き上げ、OS X 10.6-10.8のサポートは終了.
    • 上記mac版の変更に関連し、一部のプラットフォーム上での問題回避のため、mac版のデフォルトではハードウェア支援によるアンチエイリアスを無効化した。再有効化する場合は、Preferencesダイアログから、"Enable hardware anti aliasing"のチェックを入れる。
    • macOS版でも、Objectsタブなどから、オブジェクトの色や透明度等の編集を可能にした。
    • 最新のRIETAN-FPを用いた粉末回折パターンのシミュレーションに対応。
    • 結合原子価パラメーターのファイルをbvparm2013.cifからbvparm2016.cifに更新。
  • 2018年3月28日 ver. 3.4.4
    • 配位多面体の面が特定の条件で一部欠落するバグを修正。
    • VASPとDL_POLY形式でのエクスポートの際、ver. 3.4.1以降で単位胞の境界上の原子が欠落する場合がある問題を修正。